今日で10月も終わりですね。
金木犀も散ってしまいましたが、外を歩くとまだ冬になる前の、甘やかな香りをわずかに含んだ風が頬にやさしく感じられます。
いつもこのコラムを読んでくださって、本当にありがとうございます。
昨年の10月から始まったコラムも今回で7回目となり、これが、私の担当する今年最後の回となりました。
すでに、新聞やテレビなどで報道されましたので、県内ではご存知の方も多いと思いますが、去る9月5日に「働く女性の懇談会」が長崎労働局と長崎県に提言書を提出し、このほどその内容全部が長崎県のホームページに掲載され、全国どこからでもご覧いただけるようになりました。
http://www.pref.nagasaki.jp/koyo/news/20081006/index.html
働く女性がその能力を十分に発揮するために、企業や行政、県民が取り組むべきさまざまな課題について、意見交換をし、提言することを目的として長崎労働局と長崎県が手を携える形で設置された「働く女性の懇談会」。ここに私も委員として参加し、提言書の取りまとめという初めての経験をさせていただきました。
委員は県内企業で働く女性たち8名。働く人の半数は女性であるのに、女性を取り巻く就業環境は決して十分ではないとの現状をふまえて、「女性がいきいきと働く事ができる環境があれば、男性もいきいきと働ける」として、そのためにはどうすればよいのかについて議論を重ね、提言書を作成しました。
作成にあたり、私たち委員は、「提言書は自分達の言葉で書こう」ということを大切にしました。
皆、職場も、職歴も、立場も違うメンバーです。それぞれの立場から、意見を述べ合い、メールを頻繁にやりとりし、提出前日の午後まで「てにをは」の一文字にまでこだわって推敲を重ねました。
県の担当課の方は、さぞや大変だったことと思います。提言書を受け取ってくださる副知事さんに担当課からの事前説明が済んだ後だというのに、まだ気になる箇所があるからと、差し替えをお願いしたりしたのですから・・・
さらに、提言書の構成さえも、取りまとめがそろそろ佳境に入った頃に、がらりと大きく変わることとなりました。
当初の案では、提言書を読んでくださる方がわかりやすいようにと、「長崎県の現状と課題」として各種調査の数値やグラフがずらりと並んだ説明が冒頭の5ページを占めていました。
しかし、委員の意見で、まずは、私達の言葉で書かれた提言を冒頭に持ってきましょう、それが一番読んでいただきたいことなのだから・・・ということになり、最後と最初の部分がそっくり入れ替わる事になりました。
県のホームページには、懇談会を2回開催、とありますが、実はその間、私たち委員は提言書をよりよいものにするために、自主的な会合を持ち、直接会って話し合い、中身を詰めていったのです。
実際に提言書をまとめるというこの一連の経験は、私にさまざまなことを考えさせてくれました。
これまで、女性の能力発揮に積極的な企業の事例や、活躍する女性管理職のお話などを伺う機会は何度かありましたが、それらはほとんど大都市の大企業の事例でした。
しかし、今回の委員は皆、長崎県内の企業で働いています。ですから、長崎という地域性や現状について、共通認識の上にお互いの意見交換をする事ができましたし、本音で語りながら前向きで建設的な考え方の持ち主ばかりで、いわば「同志」とも言えるようなメンバーでした。
中でも、座長を務められたNBC長崎放送の大田由紀・報道ライブラリー部長さん。
この方がいらっしゃらなかったら、この提言書はここまで充実したものに成り得なかったのではないかと私は思うのです。
委員の一人としては、ご自身が切り開いてこられた「働く女性の道」を、気負うことなく語られるとともに、行政や企業のあり方に対してピシリと意見を述べておられました。
また、懇談会の開催前には、会の流れをあらかた予想し、それに沿って委員のコンセンサスを取ったり、発言が偏らないための事前準備にも気を配っておられましたし、闊達な意見交換ができるようにと、形式張った会議の席の配置に関しても、県に対して改善を求められたのです。
実は、先に述べた「自主的な会合」も大田座長が声をかけて実現したものでした。各委員の貴重な時間を費やして作るものだから、決しておざなりな提言書になってはならない・・・
大田座長の強い意志が、ひしひしと伝わってきて、私たちは忙しい仕事の合間を縫っても集まることができたのだと思います。
これが報道現場に携わる人の仕事振りなのだ・・・と、大田座長の先を見越した、大胆かつ細心な采配を目の当たりにして感服すると同時に、こんな身近に働く女性の頼もしい先輩がいらっしゃることが、嬉しくてなりませんでした。
いよいよ提言書提出の日。
委員がせっかく5名も揃って県庁に出向くのだから、全員に発言の時間をいただきたい、と事前に担当課に申し入れをしたのも、大田座長でした。
「この提言書の提出がゴールではなく、ここからが始まりと捉えてください」
「<働くなら長崎県で!>と言ってもらえるような環境に」
「ワーク・ライフ・バランスの推進は、女性が主導権をとってやればうまくいくのでは」
「若い世代、これから子育てをする世代にも配慮を」
などなど、それぞれがここでも自分の言葉で臆することなく思いを述べ、藤井副知事、内田長崎労働局長に提言書をお渡しする事ができました。
この提言書をまとめていく過程で、あらためて、自分と自分の会社を振り返り、「働く」ということや「ワーク・ライフ・バランス」ということについて考える好機となりました。
提言書の「はじめに」の中に書かれている「いきいきと働く」ということ。
皆さんもぜひ、この提言書をご覧頂き、職場やご家庭で話し合っていただきたいと思います。
次回は年が明けて1月にお目にかかる予定です。
どうぞ、それまでお元気でお過ごしくださいますように。心からの感謝をこめて。